脆弱性管理ツールを導入しよう。そう決めて製品名を調べ始めた途端、手が止まった経験はありませんか。Tenable、yamory、Wiz、SBOM対応ツール……候補は次々に出てくるのに、どれが自社に合うのかは一向に見えてこない。そんな方は少なくないはずです。
迷う原因は、製品の数ではありません。「脆弱性管理ツール」という言葉が、役割の異なる複数のカテゴリをまとめて指しているからです。先に結論をお伝えします。選定は「何を守りたいか」「どの工程まで任せたいか」の2軸でタイプを決め、それから製品を比べます。この順番にするだけで、候補は一気に絞れます。
コツは、製品比較をいったん後回しにすることです。タイプさえ定まれば、見るべき製品は数本に減り、長い機能一覧とにらめっこする必要はなくなります。まずは、脆弱性管理ツールが何をしてくれるのかから整理していきましょう。
脆弱性管理ツールとは、サーバーやクラウド、ネットワーク機器といったIT資産に潜む脆弱性を検出し、優先順位を付けて、対応状況まで管理するためのツールです。日々公表される膨大な脆弱性情報を自社の構成情報と自動で突き合わせ、人手では追いきれない部分を肩代わりしてくれます。
脆弱性診断と混同されがちですが、脆弱性管理ツールは、検出から優先順位付け、対応の追跡、修正後の再確認までを継続的に回し続ける点に特徴があります。
「脆弱性管理ソリューション」と呼ばれることもありますが、その中身は製品によってかなり幅があります。だからこそ、まず共通してできることを押さえておくと、あとの比較がぶれません。ここで押さえたいのは、次の2点です。
なお、脆弱性管理そのものの必要性や、収集から評価・対応へと進む手順の全体像については、「脆弱性管理とは?必要性や放置するリスク・効率的な手順とメリットを解説」で詳しく扱っています。
ここでは、ツール選びに話を絞ります。
製品ごとに強みは違っても、脆弱性管理ツールが担う役割は、大きく5つに整理できます。自社がどこを重視するかを考える、いわば物差しです。
脆弱性管理ツールの主な機能
| 機能 | できること |
|---|---|
| 資産・構成情報の把握 | IT資産やソフトウェア構成を収集し、SBOMの取り込みなどで「何が動いているか」を一覧化 |
| 継続的な脆弱性の検出 | スキャンを定期実行し、新たに公表された脆弱性が自社資産に該当しないかを継続して照合 |
| 優先順位付け(トリアージ) | 深刻度に加え、悪用の有無や資産の重要度を組み合わせ、先に直すべき脆弱性を絞り込み |
| 対応管理・連携 | 修正手順の提示やチケット管理ツールとの連携で、対応状況を追跡 |
| レポート・可視化 | 深刻度や対応の進捗をダッシュボードに集約し、関係者への共有や報告に活用 |
なお、資産・構成情報の把握には、機器にソフトを入れる「エージェント型」と、ネットワーク経由で調べる「エージェントレス型」があり、クラウドはAPI連携で把握します。導入のしやすさに関わるため、比較時の着眼点になります。
なかでも差が出るのは、優先順位付けの精度です。脆弱性は数が多く、すべてに即対応するのは現実的ではありません。では、何を基準に絞ればよいのでしょうか。鍵になるのが、実際に攻撃で悪用が確認された脆弱性をまとめたKEVカタログのような情報です(※)。これを取り込み、本当に危険なものから片付けられるかどうかが、運用の質を大きく左右します。
もう一つ意識したいのが、どこまでを1つのツールで担うかです。検出だけを行い、対応管理は別ツールに任せる製品もあれば、検出から対応の追跡までを一気通貫でカバーする製品もあります。この「担う範囲」の違いが、次に見るタイプ分けの軸になります。
※参考:CISA|Known Exploited Vulnerabilities Catalogここが、選定でつまずく最大の理由です。「脆弱性管理ツール」とひとくくりにされていても、守る対象も、得意な工程も違うツールが、同じ棚に並んでいます。あなたが探しているのは、そのうちのどれでしょうか。見分けがつけば、候補はぐっと絞れます。まずは代表的なカテゴリを交通整理しておきましょう。
「脆弱性管理ツール」と呼ばれる主なカテゴリの違い
| カテゴリ | 主に守る対象 | 主な役割 | 混同されやすい点 |
|---|---|---|---|
| 統合管理プラットフォーム型 | 社内資産全般(サーバー・クラウド・コンテナなど) | 検出から優先順位付け・対応管理までを一画面で | 「脆弱性管理ソリューション」と呼ばれることが多く、機能が広いぶん高価になりやすい |
| スキャナ型(VM/VA) | OS・ミドルウェア・ネットワーク機器 | 既知脆弱性の検出と一覧化 | 検出が主目的で、対応の追跡は別途必要なことがある |
| ASM・EASM | 外部公開資産(ドメイン・IP・Webサイト) | 攻撃者視点で「外から見える資産」を洗い出す | 社内資産の脆弱性管理とは対象がそもそも違う |
| CSPM | クラウドの設定(権限・ストレージなど) | クラウドの設定ミスを検出 | 狙いは「脆弱性」より設定不備の発見にある |
| SCA・SBOM対応型 | ソフトウェアのコンポーネント(OSSなど) | 部品単位で脆弱性とライセンスを管理 | 開発・PSIRT向けで、サーバー運用の管理とは観点が異なる |
| 対応管理特化型 | 既存ツールが検出した脆弱性情報 | 検出はせず、対応状況の追跡やワークフロー管理に専念 | 自前では脆弱性を見つけないため、検出ツールとの併用が前提 |
| 脆弱性診断ツール | Webアプリ・自社開発のコード | 自社で作った機能に潜む脆弱性を検出 | 「管理」ではなく「診断」。管理ツールではカバーしにくい |
なお、ここでのカテゴリは役割を理解するための物差しであり、実際の製品は複数のカテゴリにまたがることも少なくありません。
また、統合管理プラットフォーム型の発展形として、KEVやEPSS、資産の重要度をもとに優先度を付ける「RBVM(リスクベース脆弱性管理)」の考え方も広がっています。
たとえばSCA・SBOM対応型は、サプライチェーン対策を求められる開発現場でよく検討されます。国もSBOMを使った脆弱性管理の手引を整備しており(※)、部品単位の管理は今後ますます当たり前になっていきそうです。逆に、社内サーバーの脆弱性をまとめて見たいだけなら、SBOM中心のツールはオーバースペックになりかねません。大切なのは、自社の目的がどのカテゴリに当たるのかを見極めることです。次の章で、いよいよ判定に入ります。
※参考:経済産業省|ソフトウェア管理に向けたSBOMの導入に関する手引ver2.0カテゴリがわかったら、次は自社がどこに当てはまるかの判定です。難しく考える必要はありません。次の2つを決めるだけで、進む方向が定まります。
この2軸を、現場でよくある状況に当てはめたのが、次の判定マップです。自社に近い行を起点に読んでみてください。
状況別・向いている脆弱性管理ツールのタイプ
| 自社の状況 | 向いているタイプ |
|---|---|
| 社内サーバーやネットワーク機器の脆弱性を、まず検出して一元管理したい | スキャナ型/統合管理プラットフォーム型 |
| クラウド・コンテナ環境が中心で、設定ミスまで含めて見たい | CSPM/クラウド対応の統合型 |
| 自社が把握しきれていない外部公開資産から洗い出したい | ASM・EASM |
| OSSや内製アプリの部品単位の脆弱性を管理し、SBOMにも対応したい | SCA・SBOM対応型 |
| 検出は別ツールで済んでおり、対応状況の管理だけ仕組み化したい | 対応管理特化型 |
| 自社開発Webアプリの作り込みの脆弱性を見つけたい | 脆弱性診断(脆弱性管理ツールの範囲外) |
なお、「SCA・SBOM対応型」は、製品を外部に提供している事業者(PSIRT体制を持つ立場)や、取引先からSBOMの提出を求められる立場では、とくに優先度が高くなります。
また、いずれのタイプを選ぶ場合も、既存のチケット管理ツール(Jira等)・SIEM・CI/CDと連携できるかを確認しておくと、導入後の運用がスムーズです。
気をつけたいのは、複数の行に当てはまるときです。オンプレもクラウドも抱えているなら、対応範囲の広い統合管理型が有力ですし、外部公開資産の棚卸しが手付かずなら、まずASMで現状を映し出してから管理ツールにつなぐ手もあります。一つに絞り切れないこともあるでしょう。そんなときは、いちばん困っている領域を起点にすると、判断がぐっと早くなります。
具体的には、まずASMやスキャナで現状を把握し、見えてきた対象範囲に合わせて管理ツールを選ぶ、というスモールスタートの進め方が現実的です。
タイプの当たりがついたら、ここからは具体的な製品です。前章のカテゴリ軸に沿って、よく名前の挙がるツールを並べてみました。ただし、対象範囲やSBOM対応は各社の方針で変わります。最終判断の前には、必ず公式情報で最新の仕様を確かめてください。
代表的な脆弱性管理ツールの整理(カテゴリ軸)
| ツール | タイプ(前章の分類) | 主な対象範囲 | SBOM対応 | 対応管理 |
|---|---|---|---|---|
| Tenable Vulnerability Management | スキャナ型(VM/VA)/対応支援まで広い | ネットワーク・クラウド資産 | 対応 | あり |
| FutureVuls | 統合管理プラットフォーム型 | OS・ミドルウェア・コンテナ・NW機器 | 対応(入出力) | あり(SSVCで判定) |
| yamory | 統合管理プラットフォーム型 | ホスト・コンテナ・クラウド・NW機器 | 対応 | あり(オートトリアージ) |
| SIDfm VM | 統合管理プラットフォーム型(情報収集が起点) | OS・ミドルウェア・アプリ | 対応(インポート) | あり |
| Wiz | CSPM(クラウド統合型) | クラウド・ワークロード | 対応(SCA寄り) | あり |
| Snyk | SCA・SBOM対応型 | アプリコード・OSS・コンテナ・IaC | 対応 | あり(修正提案) |
| MIRACLE Vul Hammer | SCA・SBOM対応型 | OS・ミドル・言語ライブラリ・コンテナ | 対応(中心) | あり(通知) |
| GMOサイバー攻撃ネットde診断ASM | ASM・EASM | 外部公開資産 | 非対応 | 可視化が中心 |
| ServiceNow Security Operations | 対応管理特化型 | 外部ツールから取り込んだ脆弱性情報 | 検出は外部に依存 | あり(ワークフローが強み) |
同じ「脆弱性管理ツール」でも、Snykのように開発工程に寄り添うものもあれば、ServiceNowのように検出はせず対応の交通整理に徹するものもあります。表を見るときの物差しは、機能の多さではありません。「自社のタイプに合っているか」という視点です。ここを軸にすると、ぐっと選びやすくなります。
タイプも候補も決まった。それでも、運用に乗せて初めて効果は出ます。機能一覧には載りにくいものの、導入後に「思っていたのと違う」となりやすいものです。そんなポイントを、先に挙げておきます。
もう一つ、ぜひ押さえてほしいのが守備範囲です。脆弱性管理ツールが得意とするのは、世の中に公表された既知の脆弱性を検出し、管理することです。では、自社で開発したWebアプリの作り込みに潜む脆弱性は、誰が見つけるのでしょうか。これは公表情報には載らないため、管理ツールだけでは拾いきれません。DAST型のツールや、専門家による脆弱性診断で別途カバーする必要があります。
たとえばユービーセキュアでは、Webアプリケーション脆弱性診断ツール「Vex」や、幅広いニーズに応じたセキュリティ診断サービスを用意しています。日々の運用は脆弱性管理ツールで回し、自社開発の部分は診断で押さえます。この役割分担にしておくと、抜け漏れが起きにくくなります。
ここまで、脆弱性管理ツールが役割の異なる複数カテゴリの総称であること、そして「守りたい対象」と「任せたい工程」の2軸でタイプを決めれば、製品が自然に絞り込めることを見てきました。
製品名から探し始めると、候補の多さに圧倒されます。けれど、先にタイプを定めてしまえば、見るべき製品は数本に減ります。検出までで十分か、対応管理まで必要か、SBOMやクラウドが絡むか。この線引きが、そのまま選定の軸になります。
さらに、自社開発のWebアプリ部分を診断で補えば、守りに厚みが出ます。どのタイプが合うのか、診断とどう組み合わせるか。迷ったときは、ユービーセキュアの無料相談で、課題の整理から相談できます。
まずは、自社が「何を・どこまで」守りたいのかを、言葉にしてみてください。そこが定まれば、ツール選びは驚くほどシンプルになります。