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アプリ開発のセキュリティ対策|OWASP Top10と脆弱性診断で守る安全な設計

作成者: 成田 大輝|May 29, 2026 8:06:52 AM

スマートフォンやWebサービスを通じてアプリを利用する場面が当たり前になり、扱われる個人情報や決済データの量も急増しています。一方で、攻撃者の手口は年々巧妙化しており、アプリの脆弱性を突かれた情報漏えいや不正アクセスの事例は後を絶ちません。アプリ開発のセキュリティ対策を後回しにしたまま進めてよいのか、迷っている担当者の方も多いのではないでしょうか。

アプリ開発のセキュリティは、設計段階での脆弱性の作り込み防止、運用フェーズでの継続的な脆弱性管理、組織・人材体制の整備という三位一体の取り組みが欠かせません。本記事ではリスクの全体像から具体的な技術対策、外注先の判断軸までを整理します。

アプリ開発におけるセキュリティ対策とは

アプリ開発のセキュリティ対策とは、ユーザーの情報と会社の信頼を守るための設計・運用の全体を指します。開発時のコーディングだけでなく、リリース後の監視やパッチ適用、トラブル対応まで含めて続けていく取り組みです。

この章で押さえておきたいのは、次の2つです。

  • アプリ開発で守るべき3つの観点(情報漏えい対策/CIAの確保/法的要件の遵守)
  • アプリのセキュリティ対策が重要である理由

アプリ開発で守るべき3つのポイント

アプリ開発で意識したいセキュリティのポイントは、大きく次の3つに整理できます。

観点 内容
情報漏えい対策 個人情報・決済情報・認証情報を不正アクセスから守る
機密性・完全性・可用性(CIA)の確保 データを盗まれず、改ざんされず、必要なときに使える状態を保つ
法的要件・規制要件の遵守 個人情報保護法、電気通信事業法、クレジットカード・セキュリティガイドラインなどを守る

とくにECやフィンテック関連のアプリでは、Webアプリケーション診断がクレジットカード・セキュリティガイドラインで事実上必須になっています。「やるかどうか」ではなく「どうやって続けていくか」を考える段階に来ています。

 ECサイトの脆弱性診断は義務化された?対応状況・費用相場・今すぐやるべき対応を解説

アプリのセキュリティ対策が重要視されている背景

アプリの機能が高度になるほど、外部ライブラリやクラウドサービスとつながる箇所も増えていきます。それだけ攻撃者に狙われやすい面も広がっていくのです。

OWASP Top 10は、世界中のアプリで深刻と評価される10種類の脆弱性を定期的にまとめている指標で、対策の優先順位を決めるときの基準になります。2025年11月に公開された2025年版では、従来「脆弱な・古いコンポーネント」として扱われていたカテゴリが「ソフトウェアサプライチェーンの失敗(A03)」として再定義・拡張され、設定不備(A02)が大きく順位を上げるなど、現代的なアプリ開発の実態がより色濃く反映されています。

国内でも、IPAが毎年公表している「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威の1位がランサム攻撃、2位がサプライチェーン攻撃と上位は4年連続で変動がなく、組織向け脅威の4位に「システムの脆弱性を悪用した攻撃」、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出されています。アプリ開発の現場で気になるテーマがしっかり反映されている内容です。

経営層に向けた指針としては、経済産業省の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」が、セキュリティを経営課題として位置づける大切さを示しています。

※参考:OWASP|OWASP Top 10:2025

アプリに潜む主なセキュリティリスク

アプリ開発のセキュリティ対策を考えるとき、出発点になるのは「何が脅威なのか」をきちんと知ることです。OWASP Top 10は世界中の専門家が脆弱性をランク付けした指標で、対策の優先順位を決めるベースとして広く使われています。

以下の3つの切り口でリスクを整理していきます。

  • OWASP Top 10で示される代表的脆弱性
  • 「設計・実装/管理・操作/保護機能」3分類でのリスク把握
  • スマホアプリとWebアプリでリスクはどう違うか

OWASP Top 10で押さえる代表的な脆弱性

OWASP Top 10(2025年版)では、Webアプリで深刻度が高い脆弱性が次のように整理されています。2021年版から大きく変わったのは、ソフトウェアサプライチェーン関連の脅威やCI/CDパイプラインへの攻撃など、開発エコシステム全体を見据えた構成になった点です。

順位 脆弱性カテゴリ 概要
A01 アクセス制御の不備
(Broken Access Control)
権限のないユーザーがリソースを操作できる脅威。2021年版から1位を維持。SSRFやCSRFもこのカテゴリに含まれる。
A02 セキュリティ設定ミス
(Security Misconfiguration)
デフォルト設定や不要機能の有効化により攻撃面が広がる。2021年版の5位から2位に上昇
A03 ソフトウェアサプライチェーンの障害
(Software Supply Chain Failures)
2025年版で新設。依存ライブラリ・ビルド基盤・配布インフラまで含む広範な侵害リスク
A04 暗号化の失敗
(Cryptographic Failures)
機密データが平文で扱われ、盗聴や情報漏えいにつながる
A05 インジェクション
(Injection)
不正な入力でDBやOSに意図しないコマンドを実行させる。XSSもここに含まれる。LLMを使うアプリでは、関連リスクとして「プロンプトインジェクション」がOWASP LLM Top 10で別途整理されている。
A06 安全でない設計
(Insecure Design)
設計段階の欠陥。脅威モデリングや安全な設計原則の不足によるリスク
A07 認証の失敗
(Authentication Failures)
弱いパスワード運用やセッション管理の不備による不正ログイン
A08 ソフトウェアとデータの整合性の不具合
(Software and Data Integrity Failures)
署名検証なしのアップデート、信頼境界の維持失敗など、ソフトウェアやデータの整合性検証の欠如によるリスク。2025年版ではA03(Software Supply Chain Failures)と役割が整理された
A09 セキュリティログと警告の失敗
(Security Logging and Alerting Failures)
ログ取得だけでなく、異常検知時のアラート不備も含む。2021年版の"Monitoring"から"Alerting"に名称変更され、ログ取得だけでなく、異常検知時のアラート発報の不備までを含むカテゴリに整理された。
A10 例外的状況の不適切な処理
(Mishandling of Exceptional Conditions)
2025年版で新設。エラー処理の不備により情報漏えいや異常動作につながる

※参照:OWASP Top 10:2025

3つの観点で整理するセキュリティリスク

OWASP Top 10の脆弱性は、原因がどこにあるかで見ると次の3つに分類するとわかりやすいです。

分類 該当する脆弱性
設計・実装・運用プロセスの問題 アクセス制御の不備、インジェクション、安全でない設計、ソフトウェアとデータの整合性の不具合、ソフトウェアサプライチェーンの障害
管理・操作の問題 セキュリティ設定ミス、認証の失敗、ログと警告の失敗、例外的状況の不適切な処理
保護機能の不備 暗号化の失敗

この分け方の良いところは、対策の担当範囲がはっきりすることです。

設計・実装の問題は開発チームのコーディング規約と上流レビューで、管理・操作の問題はインフラ運用とセキュリティ統括の役割で、保護機能の不備は暗号方式の選び方と鍵管理の体制で解決していきます。脆弱性を一つひとつ追いかけるのではなく、自社のどこに弱点がありそうかを全体から見るための地図として使うと効果的です。

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スマホアプリとWebアプリでリスクはこんなに違う

スマホアプリとWebアプリでは、攻撃者が狙う場所も必要な対策の重点も違ってきます。

スマホアプリの場合、ユーザーの端末そのものが攻撃の入り口になりやすいのが特徴です。端末ストレージに残る認証トークンや個人情報、悪意あるアプリによるマルウェア感染、OSバージョンが古いことで生まれる脆弱性などが代表的なポイントです。OWASPでは別途「Mobile Top 10」が公開されており、モバイル開発ではこちらも合わせて参照することをおすすめします。

Webアプリは不特定多数からインターネット経由でアクセスされる前提なので、SQLインジェクションやXSS、CSRF、SSRFといった通信・サーバー起点の脅威への対応が中心になります。とくに認証や決済を扱うWebアプリなら、リリース後も継続的な脆弱性診断が欠かせません。

もしセキュリティトラブルが起きてしまうと、損害賠償や行政対応のコストだけでなく、ユーザー離れやサービス停止による機会損失も発生します。事業へのインパクトが大きい領域だからこそ、開発初期からリスクを整理しておくと安心です。

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※参照:OWASP Mobile Top 10

アプリ開発で取り組みたいセキュリティ対策【技術編】

リスクの全体像が見えてきたら、次は具体的な対策に取り組んでいきましょう。アプリ開発のセキュリティ対策は、コーディング・認証・暗号化・診断・運用監視といった複数の対策を重ねて初めて効果が出るものなんです。

この章で見ていくのは、次の6つです。

  1. セキュアコーディングで弱点を作り込まない
  2. ユーザー認証・アクセス制御の強化
  3. データの暗号化と安全な通信
  4. 脆弱性診断とペネトレーションテスト
  5. WAFと継続的な脆弱性管理
  6. 生成AI活用アプリで気をつけたいこと

① セキュアコーディングで弱点を作り込まない

セキュアコーディングは、脅威を想定したうえで脆弱性を作り込まないプログラミングの手法です。

具体的には、入力バリデーションで受け付ける値の範囲・型・長さをはっきり決めておき、出力時には用途に応じたエスケープ処理(HTML、JavaScript、SQLなど)を行います。SQLインジェクションへの対策では、文字列をつなげてクエリを組み立てるのではなく、プレースホルダを使ったパラメータ化クエリを徹底するのが基本です。パスワードや認証情報を保存するときは、暗号化ではなくハッシュ化を選びます。ハッシュ化は元に戻せない一方向の処理で、攻撃者にデータを盗まれても平文パスワードを取り出せません。OWASPは新規実装でArgon2id(メモリ19MiB以上、反復2回以上、並列度1)を第一選択として推奨しており、利用できない環境ではbcrypt(コストファクター10以上)またはscryptが代替候補です。

エラーハンドリングも見落とされがちなポイントです。例外が発生したときに詳細なスタックトレースを画面に表示してしまうと、攻撃者にシステムの構造を教えるようなものになってしまいます。本番環境ではエラー詳細はログに送り、ユーザー側には汎用的なメッセージを返す設計にしておきましょう。

※参考:OWASP Password Storage Cheat Sheet
※参考:OWASP ASVS(Application Security Verification Standard)

② ユーザー認証・アクセス制御をしっかり固める

認証・認可の不備は、OWASP Top 10でも継続的に上位に入っている深刻なポイントです。パスワードだけの認証は総当たり攻撃やパスワードリスト攻撃に弱いので、SMSコードや認証アプリ、生体認証などを組み合わせる多要素認証(MFA)を取り入れたいところです。

認可については、最小権限の原則を徹底するのがコツです。各ユーザーや機能に必要最小限のアクセス権だけを渡しておけば、もし一部が侵害されてもシステム全体を乗っ取られる事態を防げます。セッション管理ではCookieにSecure・HttpOnly・SameSite属性を適切に設定して、一定時間操作がなければ自動でログアウトする仕組みもあわせて入れておくのが定番です。

③ データの暗号化と安全な通信を徹底する

通信経路の暗号化は、HTTPS/TLSによる保護を全画面・全API呼び出しで徹底するのが大前提です。Strict-Transport-Security(HSTS)ヘッダを設定してブラウザに常時HTTPS接続を強制する構成にしておくと、ダウングレード攻撃のリスクも下げられます。TLS証明書の有効期限管理や、TLS 1.2/1.3など暗号スイートの定期的な見直しもあわせて行いましょう。

保存データについては、目的に応じて2つの方式を使い分けることが大切です。

  • パスワードや認証情報は、復号できないハッシュ関数(Argon2id、bcrypt、scrypt)でソルト付きハッシュ化して保存します。
  • 決済情報や個人識別情報のように、後で参照したり利用したりする必要があるデータは、AES-256などの強力な対称暗号で暗号化します。

暗号鍵はソースコードに直書きせず、Secret ManagerやKMSなど鍵管理サービスに保管するのが基本です。鍵がアプリ本体と同じ場所に置かれていたら、せっかくの暗号化も意味がなくなってしまいます。

※参考:
IPA「TLS暗号設定ガイドライン v3.1.1」
PCI Security Standards Council「PCI DSS v4.0 公式FAQ」
OWASP Cryptographic Storage Cheat Sheet

④ 脆弱性診断とペネトレーションテスト

脆弱性を見つける手段はいくつかあって、それぞれ得意な領域が違います。代表的な手法をまとめると、次のとおりです。

手法 検出対象 使い分けの目安
SAST(静的解析) ソースコード上の脆弱なパターン 開発中・CI/CDに組み込んで早めに見つけたいとき
DAST(動的解析) 稼働中アプリの実挙動から見つかる脆弱性 リリース前・リリース後の本番相当環境で検証したいとき
ペネトレーションテスト 実攻撃シナリオで突破可能な経路 重要システムやリリース直前にしっかり確認したいとき
WAF 既知パターンの攻撃通信 診断と組み合わせて運用中の防御層を厚くしたいとき

とくにECやクレジットカード関連サービスを扱うアプリでは、Webアプリケーション診断がクレジットカード・セキュリティガイドラインで事実上必須になっているので、定期的に実施できる体制を整えておきたいところです。

※参考:日本クレジット協会|クレジットカード・セキュリティガイドライン

 脆弱性診断とは?企業を守るための目的・種類・実施ステップをわかりやすく解説

⑤ WAFと継続的な脆弱性管理で運用中も守り続ける

WAFは、Webアプリへの攻撃通信を検出してブロックする防御層として働きます。脆弱性が修正されるまでの時間稼ぎとして有効ですが、根本的な脆弱性そのものを取り除いてくれるわけではありません。WAFと脆弱性診断は両方そろえて使うのが現実的な選び方です。

OWASP Top 10:2025でA03「ソフトウェアサプライチェーンの不備」が3位に格上げされたことからもわかるように、運用フェーズでは、依存ライブラリやOS、ミドルウェアの脆弱性情報を継続的にウォッチして、パッチを早めに当てる仕組みが大切になります。ログ管理についても、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」で「システムの脆弱性を悪用した攻撃」が4位、「内部不正による情報漏えい等」が7位にランクインしている点を踏まえ、アクセスログ・操作ログ・認証ログをきちんと残し、改ざんできない仕組みで保管することが重要です。インシデントが発生したときの連絡フローや対応手順を前もって文書にしておくことも、被害を広げないために重要なポイントです。

※参考:
OWASP Top 10:2025 A03 Software Supply Chain Failures
IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」

⑥ 生成AI活用アプリで気をつけたいこと

チャットボットやコード生成機能を組み込んだアプリが増えるにつれ、生成AIならではのリスクへの対応も大切になってきました。代表例がプロンプトインジェクションです。ユーザーの入力に細工をして本来の指示を上書きし、内部情報を引き出したり意図しない処理を実行させたりする攻撃を指します。OWASPでは2023年から「OWASP Top 10 for LLM Applications」という独立した基準を公開しており、最新の2025年版では従来のWebアプリにはなかった生成AI特有のリスクが整理されています。

もう1つ気をつけたいのが、機密情報がAIモデル側に流れてしまうリスクです。社内データやユーザーデータを軽い気持ちでプロンプトに渡すと、外部サービスのログや学習データに残ってしまう可能性があります。使うモデルのデータ取り扱いポリシーを確認して、入力する情報の範囲やマスキングの方針を社内ガイドラインとしてまとめておくと安心です。

 生成AIの進化とWebアプリのセキュリティ ~光あるところに影あり~
 iOSアプリがApp Store以外からもインストール可能に?サイドローディングによるセキュリティリスクと対策について

※参考:OWASP Top 10 for LLM Applications 2025

組織や人材面でのセキュリティ対策も忘れずに

技術対策をどれだけ積み上げても、運用する組織や人材の体制が弱ければ効果は出にくくなってしまいます。脆弱性対策を続けるコストや専門人材の不足、組織間のコミュニケーション不足は、多くの会社が抱えるよくある悩みです。

この章では、次の2つの視点から運用面の対策を整理していきます。

  • 組織全体で取り組むためのしくみづくり(ISMS、CSIRT、DevSecOps)
  • 人材を確保するための3つの選択肢

組織全体で取り組むためのしくみづくり

組織レベルでまず押さえておきたいのが、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)です。会社全体でセキュリティの基準・運用ルール・責任の範囲を統一する枠組みで、認証規格としてはISO/IEC 27001(最新版は2022年版)が広く使われています。部門ごとにバラバラだった対策を一本化することで、抜け漏れを減らしていけます。

インシデントが起きたときに対応する組織として、代表的なものにCSIRT・SOC・PSIRTがあります。

CSIRT(Computer Security Incident Response Team)は組織全体のインシデント対応を担い、リスク分析・原因調査・関係部門への連絡・外部公表の判断を行います。SOC(Security Operation Center)は、ログ監視やアラート発報を24時間体制で行う運用組織です。PSIRT(Product Security Incident Response Team)は、自社が開発・提供する製品・サービスの脆弱性に対応する組織で、アプリやサービスを提供する企業では特に重要です。脆弱性報告窓口の整備、CVE採番への対応、脆弱性情報の公表手順などを担当します。日頃から訓練を重ねておくと、いざというときに被害が広がる前に動ける確率が上がります。

最近注目を集めているのがDevSecOpsで、要件定義から運用までのすべての工程にセキュリティを組み込む考え方です。CI/CDパイプラインにSAST・DASTを組み込んで、プルリクエストの段階で脆弱性を見つける運用は、人材不足に悩む組織でも比較的取り入れやすい代表例といえます。

 セキュリティが現場で進まない?DevSecOps導入のあるあると乗り越え方

人材を確保するための3つの選択肢

人材確保の方法は、業務委託・社内教育・採用の3つに整理できます。それぞれの特徴をまとめると次のとおりです。

手段 強み 注意点
業務委託 採用コストを抑えながら専門知見を活用できる 社内にノウハウが蓄積されにくい
社内教育 自社業務に合った人材を中長期で育成できる 戦力化まで時間がかかる
採用 即戦力を確保できる 採用市場での競争が激しく難易度が高い

セキュリティ人材は採用市場で慢性的に不足している状況が続いていて、自社単独で確保するのが難しいケースも多いです。そんなときは脆弱性診断ツールやWAFで作業を自動化し、限られた人員でも続けやすい体制を作る方法が現実的です。たとえばWebアプリケーションの脆弱性診断を内製化したいなら、専門知識がなくても操作できる診断ツールを活用するのが有効な選択肢になります。

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アプリ開発を外注するときのセキュリティで見るべきポイント

自社だけで開発リソースとセキュリティ知見の両方をそろえるのが難しいなら、外部の開発会社に委託するのが現実的な選択肢になります。ただしベンダーのセキュリティ対応力には大きな差があるので、選び方の基準を持っておかないと、リリース後にトラブルにつながりかねません。

外注するときに見ておきたいポイントは、次の3つです。

  • セキュリティ対応に強い開発会社の見極め方
  • 運用・保守体制のチェックポイント
  • 発注側が事前に準備しておきたいこと

セキュリティ対応に強い開発会社の見極め方

まず確認したいのが、過去のアプリ開発実績の中で、セキュリティ要件が高い案件を扱ってきた経験です。金融、医療、ECなど機密性の高い領域での開発実績は、セキュリティ対応力を測るわかりやすい目安になります。

ISO/IEC27001(ISMS認証、最新は2022年版)やプライバシーマークの有無を確認するときは、「取得しているか」だけでなく以下まで踏み込んで確認しましょう。

  • 適用範囲:認証範囲が委託業務をカバーしているか(一部部門だけの認証ではないか)
  • 取得年と直近の更新審査:継続審査を通っているか
  • 再認証時の指摘事項への対応状況

もうひとつのポイントは、セキュリティ専門の人材が組織内にいるかどうか。情報処理安全確保支援士などの国家資格を持っているエンジニアや、脆弱性診断を担当できるメンバーがいるかどうかは、セキュリティ案件への対応力を見極めるヒントになります。

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運用・保守体制のチェックポイント

アプリは開発・リリースで終わりではなく、新しい脆弱性が見つかるたびに対応が必要になる、ずっと付き合っていく相手です。リリース後の脆弱性診断をどのくらいの頻度・範囲で実施してくれるのか、パッチ適用のSLAはどうなっているのかを契約前に確認しておきましょう。

インシデントが発生したときの連絡体制と対応SLAも大事なチェックポイントです。「平日日中のみ対応」と「24時間365日対応」では、被害を抑えられる確率が大きく変わってきますからね。自社サービスの重要度に見合った対応レベルが用意されているかを照らし合わせて判断するのがおすすめです。

発注側が事前に準備しておきたいこと

外注先に丸投げの発注をしてしまうと、セキュリティ品質にバラつきが出やすくなります。発注側であらかじめセキュリティ要件定義書を用意して、求める診断レベル(脆弱性診断の頻度、ペネトレーションテストの実施可否、対応すべきガイドラインなど)をはっきり伝えておくと、品質を担保しやすくなります。

外注先と並行して、Webアプリケーション・サイトの脆弱性診断のような第三者の診断サービスを別に使う構成も効果的です。開発ベンダーと診断ベンダーを分けておくと、お互いにチェックが効いて見落としを減らせます。

よくある質問(FAQ)

アプリ開発のセキュリティについて、よく聞かれる疑問をまとめました。

Q1:アプリ開発のセキュリティ対策はどの段階から始めるべき?

要件定義の段階から始めるのがおすすめです。

設計・実装・テスト・運用の各フェーズでセキュリティを意識することで、後工程での手戻りや脆弱性の作り込みをかなり減らせます。この考え方は「セキュリティ・バイ・デザイン(Security by Design)」と呼ばれ、CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)や日米含む13か国の政府機関が共同で推奨する国際的なトレンドになっています。リリース直前にまとめて対策しようとすると、修正コストが膨らんだり見落としが起きやすくなったりするので注意しましょう。

Q2:脆弱性診断とペネトレーションテストの違いは?

脆弱性診断は、アプリ全体をひと通りスキャンして既知の脆弱性パターンを洗い出す検査です。一方ペネトレーションテストは、特定の目標(管理者権限の奪取、機密情報の取得など)を設定して、実際の攻撃者と同じ目線で侵入経路を試す検証になります。

網羅性を求めたいなら脆弱性診断、突破できるかどうかを確かめたいならペネトレーションテスト、というふうに使い分けるのがおすすめです。

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Q3:WAFを導入すれば脆弱性診断は不要?

不要にはなりません。WAFは既知のパターンの攻撃通信をブロックする防御層として有効ですが、アプリそのものの脆弱性を取り除いてくれるわけではありません。

特に以下のような脆弱性は、WAFでは防げない/検知できないことが多いです。

  • 未知の脆弱性(ゼロデイ攻撃):シグネチャ未対応のため通過してしまう
  • ビジネスロジックの欠陥:「正常な通信」として処理されるため検知できない
  • 認証・認可の不備:通信内容が正常でも権限チェックが甘いと突破される
  • 暗号化された通信の中身:適切なTLS終端設定がないと内部を見られない

WAFは時間稼ぎのしくみ、脆弱性診断は根本対策のためのもの、と考えて両方を組み合わせて使うのが現実的です。

Q4:個人開発・小規模アプリでも最低限やるべきセキュリティ対策は?

規模を問わず、HTTPS/TLSの徹底、入力バリデーションと出力エスケープ、認証情報の安全な保管、依存ライブラリの定期アップデート、この4つは最低限押さえておきたい対策です。いずれもOWASP Mobile Top 10やOWASP Top 10で上位に挙げられている脅威への基本対策にあたり、リスクを下げる効果が大きい領域なので、まずはここから着手するのがおすすめです。

まとめ

アプリ開発のセキュリティは、設計段階で弱点を作り込まないこと、運用フェーズで脆弱性を管理し続けること、組織や人材の体制を整えること。この3つを組み合わせて初めてしっかり機能します。技術対策にばかり力を入れると運用で破綻してしまったり、組織論ばかりだと現場の実装が追いつかなかったり、と落とし穴もあるので、OWASP Top 10(2025年版)やIPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」のような一次情報を出発点にして優先順位を決め、技術と運用を両輪で支えていく構成が現実的な解になります。

自社単独で診断体制まで整えるのが難しい場合は、専門ベンダーの活用が有効な選択肢です。ユービーセキュアのWebアプリケーション・サイトの脆弱性診断、セキュリティ診断では、ツール診断と手動診断を組み合わせて、開発フェーズや運用フェーズに応じた診断プランを選べます。導入を検討する際は無料相談から、自社の課題に合った診断範囲を整理してみてください。