SOC(Security Operation Center、ソック)とは、ネットワークやシステムを24時間365日体制で監視し、サイバー攻撃の検知・分析・通知を行うセキュリティの専門組織です。「セキュリティオペレーションセンター」とも呼ばれ、自社のセキュリティ監視の中核を担います。

SOCの業務はアラート監視・分析調査・インシデント通知・体制維持管理の4つに大別され、運用の形態には自社で構築する方法と外部のマネージドサービスを利用する方法があります。どちらの形態を選ぶか、そしてAIや自動化ツールで大量アラートの処理をどう効率化するかが、監視体制を持続させられるかどうかを分けます。

そこでこの記事では、SOCの役割と業務内容からCSIRT・MDRとの違い、運用形態の選び方、AI活用の最新動向までを解説します。

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SOCとは? セキュリティ監視を担う専門組織の定義と業務

ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃は企業規模を問わず広がっており、警察庁によると2025年のランサムウェア被害の報告件数は226件に達しています(※1)。

一方で、KPMGコンサルティングが国内上場企業424社を対象に実施した調査では、サイバーセキュリティの推進組織を設置していない企業が39.4%にのぼります(※2)。こうした脅威に対し、組織的な監視を担うのがSOCです。

日々の運用は、次の4つの基本業務とSIEMなどのツールを組み合わせて成り立ちます。

SOCが担う4つの基本業務

SOCの日常業務は、アラート監視・分析調査・インシデント通知・体制維持管理の4つに整理できます。異常を検知してから対応につなげるまでの一連の流れを、それぞれの工程が支えています。

1. アラート監視

アラート監視は、ファイアウォールやIDS/IPS(Intrusion Detection System / Intrusion Prevention System:不正侵入検知・防御システム)などのセキュリティ機器が生成するログやアラートを24時間365日監視し、異常を検出する業務です。

攻撃はいつ発生するかわからないため、多くのSOCでは24時間365日体制がとられますが、自社の要員だけで運用する場合には業務時間帯のみを対象とし、夜間・休日は外部のSOCサービスに委託するといった形も選択肢でしょう。

2. 分析・調査

分析・調査は、監視で検知した異常の原因や影響範囲を詳しく調べ、実際の脅威なのか誤検知なのかを判断する業務です。ここで誤検知を的確にふるい分けられないと、対応すべき本物の脅威が大量の通知に埋もれてしまいます。

3. インシデント通知・報告

インシデント通知・報告は、重大な脅威が確認された場合にCSIRTや経営層へ迅速に通知する業務です。あわせて、監視状況を定期的に報告し、平常時のセキュリティ状態を関係者が把握できるようにします。検知した脅威を対応部門へ確実につなぐ役割を担います。

なお、個人データの漏えいが疑われる場合の個人情報保護委員会への報告など、社外への届出は一般にCSIRTや管理部門が担う領域であり、SOCの通知はその起点となります。

4. 体制の維持管理

体制の維持管理は、SOCメンバーのシフト管理やスキル研修、SIEMなどの検知ルールのチューニングを含む、安定運用を支える業務です。監視の精度は検知ルールの調整次第で変わるため、運用しながら継続的に見直すことで監視の質を保ちます。

あわせて、新しく導入したシステムを監視対象に追加したり、最新の攻撃手口の情報を検知ルールに反映したりする作業も、この業務に含まれます。

SOCの運用を支えるツール(SIEM・SOAR・XDR)

SOCの4業務は人手だけでは回らず、ログの収集・分析・対応を支えるツールが不可欠です。

代表的なものがSIEM・SOAR・XDRの3つで、それぞれ収集と分析、対応の自動化、横断的な検知という異なる役割を担い、組み合わせて使われます。

SIEM(ログの一元管理と相関分析)

SIEM(Security Information and Event Management:セキュリティ情報イベント管理)は、複数の機器から集めたログを統合し、相関分析によって単体では見えない異常を検知するツールです。SOCでは監視の土台として位置づけられ、膨大なログの中から攻撃の兆候を浮かび上がらせる中核の役割を果たします。

SOAR(インシデント対応の自動化)

SOAR(Security Orchestration, Automation and Response:セキュリティのオーケストレーション・自動化・対応)は、あらかじめ定めたルール(プレイブック)に基づいて、特定のアラートへの対処を自動で実行するツールです。定型的な初動対応を自動化し、アナリストの手作業を減らす目的で使われます。

たとえば、マルウェア感染が疑われる端末をネットワークから隔離する、関連する脅威情報を自動で照会する、といった処理が該当します。

ただし、自動化の前提として対応手順が文書化されている必要があるため、運用ルールが固まっていない段階での導入は効果が出にくい点に注意が必要です。

XDR(複数レイヤーの横断検知)

XDR(Extended Detection and Response:拡張検知・対応)は、エンドポイント・メール・ネットワークなど複数のレイヤーを横断して脅威を検知し、対処までを一元化するツールです。個別の機器では見落としがちな攻撃の連鎖を、レイヤーをまたいで捉えるために活用されます。

名称の「Extended(拡張)」が示すとおり、XDRは端末を対象とするEDR(Endpoint Detection and Response:エンドポイントでの検知・対応)を起点に、監視の対象範囲を他のレイヤーへ広げた考え方です。そのため、まず自社にEDRが導入されているかが、XDR検討の前提になります。

※1 警察庁|「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」2026年
※2 KPMGコンサルティング|「サイバーセキュリティサーベイ2026」2026年

SOCとCSIRT・MDRはどう違う? 役割分担と連携の考え方

SOCを整備しようとすると、CSIRTやMDRといった似た言葉に必ず出会います。この3者は担当するフェーズと組織の形態が異なります。それぞれの位置づけを押さえると、監視から対応・復旧までを一貫させる体制を設計できます。

観点 SOC CSIRT MDR
主な役割 脅威の検知・分析 インシデント対応・復旧・再発防止 検知から対応・復旧支援までの提供
活動フェーズ インシデント前〜発生時 平常時の体制整備・訓練+インシデント発生後の対応 予防〜発生後まで
組織形態 自社内の組織・部署 自社内の組織・チーム 外部ベンダーのサービス
サービス範囲 検知した脅威の情報をCSIRTへ引き継ぐ SOCからの情報をもとに対応を統括する 外部から検知・対応の機能を補完する

役割分担が曖昧なまま両方の機能を1つのチームに求めると、体制設計は混乱しやすくなります。まずは検知を担う機能と対応を担う機能を分けて考えることが、体制を整理する第一歩です。

SOCとCSIRTの違い(検知と対応の分業)

SOCは脅威の検知・分析に重点を置く組織であるのに対し、CSIRT(Computer Security Incident Response Team:コンピュータセキュリティインシデント対応チーム)はインシデント発生後の対応・被害の最小化・復旧に重点を置きます。

両者は、脅威を検知する機能と、検知後の対応を統括する機能に分かれた分業関係にあります。

実務では、SOCが検知した技術的な情報をCSIRTに引き継ぐ流れが基本です。CSIRTはその情報をもとに、事業リスクや法務リスクを含めた総合的な判断を下し、関係者への連絡や復旧を進めます。

SOCとMDRの違い(組織とサービスの関係)

SOCとCSIRTが自社内の組織であるのに対し、MDR(Managed Detection and Response:マネージド検知・対応)は監視・検知から対応までを外部の専門ベンダーがサービスとして提供する形態です。

MDRは予防・検知に加えて対応や復旧支援までをサービス範囲に含むため、監視・検知に限定したSOCの運用と比べると対応範囲が広くなります。そのため、自社のSOC機能そのものをMDRに委託する形態も選択肢になります。この「自社で持つか、外部に委ねるか」という論点は、次に扱う運用形態の選択に直結します。

SOCの運用形態はどう選ぶ? 内製と外部委託の比較

SOCの運用は自社構築(プライベートSOC)と外部委託(マネージドSOC)の2形態に大別され、自社の規模・セキュリティ人材の有無・監視対象の範囲に応じてどちらを選ぶかが導入の成否を分けます。

どちらが優れているという話ではなく、自社の状況に照らしてどちらが現実的に維持できるかで判断します。

自社構築(プライベートSOC)の特徴と適合条件

プライベートSOCの強みは、自社のセキュリティポリシーに合わせた柔軟な運用と、内部情報の一元管理ができる点です。監視から対応までを自社で完結できるため、機密性の高い情報を外部に預けずに済み、独自の運用ルールも反映しやすくなります。監視の過程で得た知見が社内に蓄積され、システム構成の変更や新たな脅威に合わせて検知ルールを調整しやすくなる点も利点です。

一方で、24時間365日体制を維持するには、監視を担うSOCオペレーターと分析を担うSOCアナリストを含む専門人材の確保・育成が欠かせません。交代制のシフトを組める人数を常時抱え、設備投資も必要になるため、プライベートSOCは相応の人員と設備を備えた大企業向けの選択肢になります。

外部SOCサービス(マネージドSOC)の特徴と注意点

マネージドSOCは、専門ベンダーに監視を委託する形態です。自社で人材を確保したりシステムを構築したりするコストを抑えつつ、24時間365日の監視体制を比較的短期間で確保できます。セキュリティ人材の採用が難しく、内製の前提が崩れている場合の選択肢になります。

導入時に確認したいのが、サービスの対応範囲です。監視・通知までなのか、インシデント発生後の対応支援まで含むのかで、社内に求められる動きが変わります。

見落とされやすいのが、アラート通知を受け取った後の社内側の受け皿です。外部SOCから通知が来ても、夜間の連絡先が決まっていなかったり関係部署の連携フローがなかったりすると、通知が届いても対応できません。委託と同時に、夜間連絡先の明確化と関係部署をつなぐフローを整備しておく必要があります。

SOCサービスを選ぶ3つの評価軸

外部SOCサービスを比較する際は、監視体制の充実度・サービスの対応範囲・運用メンバーの専門性という3つの軸で見ると、サービス間の実質的な差が見えてきます。

1. 監視体制の充実度

まず、24時間365日の監視体制が実際に確保されているかを確認します。夜間・休日・大型連休といった、攻撃者が狙いやすい時間帯の対応品質まで含めて見ることが欠かせません。「24時間対応」と表記されていても、時間帯によって体制が薄くなるサービスもあるためです。

2. サービスの対応範囲

次に、監視・通知だけにとどまるのか、インシデント発生後の対応支援まで含むのかを確認します。あわせて、自社環境に合わせた検知ルールのカスタマイズが可能かも見ておきます。対応範囲が狭いと、通知後の対応を結局すべて自社で背負うことになります。

カスタマイズについては、可否だけでなく「誰が実施するか」まで確認しておくと安心です。誤検知が続いたときにベンダーがルールを調整するのか、自社から依頼して都度費用が発生するのかで、運用開始後の負担が変わります。

3. 運用メンバーの専門性と実績

最後に、運用メンバーの規模や専門資格(CEH:Certified Ethical Hacker、認定ホワイトハッカーなど)の保有状況、過去の運用実績や対応事例を確認します。分析の質は担当するアナリストの経験に左右されるため、誰が監視するのかは監視の精度に直結します。

SOCが抱える課題とAI活用の最新動向

どの運用形態を選んでも、従来型SOCには共通の壁があります。アラートが多すぎて処理しきれず、それをさばく人材も足りないという課題です。この課題への打ち手として注目されているのが、AIエージェントによるトリアージの自動化です。

アラート過多と人材不足が生む構造的な限界

SOCの運用は、人材不足・アラート過多・バーンアウトという3つの課題が連鎖しています。

まず人材面では、ISC2が世界のセキュリティ担当者1万6,000人以上を対象に実施した2025年の調査によると、回答者の95%が自チーム内に何らかのスキルギャップを抱えており、59%がそのギャップを「重大または深刻」と評価しています(2024年の44%から拡大)(※1)。頭数をそろえるだけでなく、SOCアナリストに求められるスキルを備えた人材の確保が年々難しくなっています。

人手が足りない一方で、処理すべきアラートは膨大です。海外の調査では、組織の73%が誤検知を脅威検出における最大の課題として挙げています(※2)。大量の誤報の中から本物の脅威を選別する作業が、限られた人員に重くのしかかります。

この負荷は担当者の疲弊につながります。別の調査でも、セキュリティ担当者の76%が過去1年間にサイバー疲労やバーンアウトを経験したと回答しています(※3)。アラート処理の負荷が根因である以上、人員を増やすだけでは離職と補充を繰り返す構造から抜け出せません。

エージェンティックSOCが変えるセキュリティ運用

アラート処理を効率化する方向として注目を集めているのが、AIエージェントを運用の中心に据える体制です。エージェンティックSOCと呼ばれるこの仕組みでは、AIエージェントがアラートの初期トリアージ・ログの相関分析・対処の推奨を自律的に行い、人間のアナリストが高度な判断に集中できます。

従来アナリストが担っていたLevel-1のトリアージをAIに任せることで、アラート過多の負荷を根元から軽くする狙いがあります。ただし、AIエージェントによる自律運用はまだ発展の途上にあります。すべての判断を任せられる段階ではなく、現時点では人間のアナリストの負荷を軽減する補助として捉えるのが現実的です。

導入を検討する際は、AIが下した判断の根拠を後から追跡できるか、対応を自動実行する範囲をどこまでに限定するかを確認しておく必要があります。

監視だけでは防げない脆弱性への予防的アプローチ

SOCは攻撃を検知し、インシデントに対応するための仕組みです。言い換えれば、攻撃が発生した後に機能する体制であり、攻撃の起点となる脆弱性そのものを塞ぐものではありません。Webアプリケーションやプラットフォームに未修正の脆弱性が残っている限り、どれだけ精度の高い監視体制を整えても、攻撃者はその入口から侵入を試み続けます。

侵入を未然に防ぐには、脆弱性を事前に発見して修正する予防的な対策が必要です。これをSOCの監視体制と組み合わせることで、「侵入させない層」と「侵入後の被害を最小化する層」の両方が揃い、多層防御として機能します。

ユービーセキュアは、脆弱性診断ツール「Vex」と専門家による脆弱性診断サービスを通じて、こうした予防的対策を支援しています。SOCの導入と並行して脆弱性対策を進めたい場合は、まず自社システムの診断から着手するのが近道です。ユービーセキュア公式サイトから、サービスの詳細や相談窓口を確認してみてください。

※1 ISC2|「2025 ISC2 Cybersecurity Workforce Study」
※2 Stamus Networks(SANS Institute調査)|「2025 SANS Detection & Response Survey」
※3 Sophos|「Addressing Cybersecurity Burnout in 2025」

まとめ SOCは検知の要、脆弱性対策と組み合わせて多層防御に

SOCの実効性を高める第一歩は、自社の規模とリソースに応じて自社構築(プライベートSOC)と外部委託(マネージドSOC)のどちらを選ぶかを見極めることにあります。

人材の採用や24時間シフトの維持が難しい場合は、マネージドSOCで監視体制を確保し、通知後の社内受け皿を整えるのが現実的です。あわせて、CSIRTとの役割分担を明確にし、AIエージェントによるアラート処理の効率化も取り込むことで、限られたリソースでも監視を持続させやすくなります。

SOCの監視で脅威を早期に検知できても、攻撃の入り口となる脆弱性が放置されていれば根本的なリスクは残ります。SOC導入とあわせた脆弱性対策を検討される際は、ユービーセキュアまでお気軽にご相談ください。