サイバー攻撃の自動化や高度化が進む現在、システムの脆弱性を放置することは企業にとって重大なリスクとなりえます。
セキュリティ対策の基本として「脆弱性スキャン」の重要性が高まるなか、実施方法やツールの選び方に悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、脆弱性スキャンの必要性や主な診断対象、具体的な実施手順をわかりやすく解説します。
脆弱性スキャンとは?
脆弱性スキャンとは、専用ツールを用いてシステムやネットワーク、アプリケーションに潜むセキュリティ上の欠陥(脆弱性)を洗い出し、事前に対策を行うためのプロセスです。
具体的には「既知の脆弱性データベース」と「現在の自社システムの状態」を自動で照合し、以下のような問題を検出します。
- セキュリティ更新プログラム(パッチ)の適用漏れ
- サーバーやネットワーク機器の設定ミス
- 不要なサービスの稼働
システムの脆弱性を事前に把握して対処しておくことで、データの改ざんや情報漏えい、システムダウンといった深刻な被害を未然に防ぎやすくなります。
脆弱性スキャンの必要性
近年は生成AIを悪用したサイバー攻撃が出現し、マルウェアの大量生産やフィッシングメールの巧妙化が進んでいます。総務省でもAIに起因するリスクへの対策を呼びかけており、人間の手動確認だけでは攻撃のスピードに追いつけないのが現状です。

出典:総務省「データ集 6. サイバーセキュリティにおける生成AI等に関する取組」
また以下の理由からも、脆弱性スキャンツールの導入が求められています。
- セキュリティガイドライン(PCI DSS(※1)やISMAP(※2)など)で必須要件となっている
- 日々新しく発見され続ける脆弱性に対応しなければならない
- 情報漏えいによる損害賠償や社会的信用の失墜を未然に防ぐ必要がある
※1 PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard):クレジットカード情報などを安全に守るための、国際的なセキュリティ基準
※2 ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program):政府が求める要件を満たしたクラウドサービスを評価・登録する制度
脆弱性スキャンの主な5つの対象
脆弱性スキャンを導入する際は、自社の守るべき情報資産がどこにあるかを正確に把握し、適切な診断対象を選ぶことが大切です。ここでは、対象となる主要な5つの領域について解説します。
- Webアプリケーション
- ネットワーク
- クラウド
- スマホアプリ
- OT・IoT
1.Webアプリケーション
企業のWebサイトやECサイト、顧客ポータルなどのWebアプリケーションは、優先してスキャンを実施すべき領域です。インターネット経由で誰でもアクセスできる状態にあるため、常にサイバー攻撃の標的になりやすいからです。
脆弱性スキャンを実施することで、意図しないデータベースの書き換えや、外部からの不正操作を許す隙がないかなどを事前に点検できます。
2.ネットワーク
サーバーOSやルーターといったネットワーク機器も、セキュリティ上の問題がないかを診断する必要があります。システム全体を構成する基盤に脆弱性があると、上位のアプリケーションのセキュリティ対策を厳重にしていても侵入されかねません。
脆弱性スキャンでは、主に以下の点を確認します。
- 利用しているソフトウェアやサービスのバージョン
- マルウェアの感染やバックドア(不正な侵入口)の有無
3.クラウド
AWS・Azure・GCPなどのパブリッククラウド環境も、脆弱性スキャンの重要な対象です。総務省の調査では、2024年時点で80.6%の企業がクラウドサービスを利用しており、セキュリティ対策の重要性が高まっている領域といえます。

出典:総務省「情報通信白書令和7年版|第Ⅰ部 特集 広がりゆく「社会基盤」としてのデジタル」
スキャンでは従来のOSやソフトウェアの欠陥だけでなく、アクセス権限の付与間違いやデータ公開範囲の設定ミスといった、クラウド特有の不備を重点的に検査します。
クラウド化に伴うセキュリティリスクの失敗事例については、以下の記事を参考にしてください。
4.スマホアプリ
iOSやAndroidで動作するスマホアプリも、セキュリティ上の欠陥がないか診断します。提供アプリのなかには決済情報や個人情報などの機密データを扱うものも多いため、企業にとってスマホアプリの脆弱性管理は重要な課題です。
脆弱性スキャンではアプリのプログラムファイルそのものを解析し、主に以下の2点を確認します。
- 安全ではないデータの保存方法になっていないか
- サーバーと通信する際の暗号化に不備がないか
スマホアプリは一度ユーザーの端末にインストールされると、脆弱性が見つかっても企業側から強制的に修正プログラムを適用させることが困難です。
そのため、アプリを配布する前の段階で、脆弱性スキャンを実施しておくことが重要です。
5.OT・IoT
工場内の制御システム(OT:Operational Technology)や監視カメラをはじめとするIoT機器も、脆弱性スキャンの対象です。
IoT機器はインターネットに常時接続される一方で、パソコンなどと比べてセキュリティ対策が手薄になりやすく、サイバー攻撃で狙われる傾向があるためです。スキャンでは、機器に組み込まれたソフトウェアやハードウェアの欠陥を調査します。
ただし、OT領域は業界ごとに独自の通信規格が使われていることがあり、Webシステムと比べて対応できるスキャンツールが限られます。自社の機器構成に合うツールを慎重に選定することが大切です。
脆弱性スキャンの4つの種類
脆弱性スキャンは、実施するネットワークの位置やログイン権限の有無によって、主に4つの種類に分けられます。自社のシステム環境や守るべき情報資産に合わせて、これらの種類を適切に組み合わせて実施しましょう。
- 外部脆弱性スキャン
- 内部脆弱性スキャン
- 認証スキャン
- 非認証スキャン
1.外部脆弱性スキャン
外部脆弱性スキャンは、インターネット経由で企業ネットワークの外側から検査する手法です。実際のサイバー攻撃者と同じ視点に立ち、外部から見えるシステムの弱点を探し出します。
検知する項目の例は、以下のとおりです。
- 外部公開されているWebアプリケーションの欠陥
- 意図せず開放されている通信ポート
- 既知のソフトウェアの弱点
2.内部脆弱性スキャン
企業のファイアウォールの内側から、ネットワークや機器を診断する手法が内部脆弱性スキャンです。インターネット経由の外部スキャンでは届かない領域に潜むリスクを洗い出します。
具体的には、社内ネットワークに接続された各機器に対して、不要なサービスが動いていないか、ソフトウェアのバージョンが古くないかなどを調査します。
3.認証スキャン
認証スキャンは、スキャンツールに管理者権限などのログイン情報を設定して行う診断方法です。サーバーの内部にログインするため、より深い階層の設定状況やプログラムの状況を確認しやすくなります。
外部からは見えないOSの設定ミスをはじめ、セキュリティパッチの適用漏れや古いソフトウェアの残存などを検出できる可能性があります。
4.非認証スキャン
ログイン情報を使わず、外部からアクセスできる範囲のみを調べる診断方法が非認証スキャンです。攻撃者がログイン情報を持っていない初期段階において、システムがどのように見えているかをシミュレーションするのに役立ちます。
外から見える開放ポートや古いバージョンのソフトウェア、一般的な設定の不備などを攻撃者の目線で検出します。特権アクセスが必要な深い階層までは調べられませんが、広範囲のシステムを素早く点検するのに向いているでしょう。
なお、ここまで解説した4種類の脆弱性スキャンは、あくまで「既知の脆弱性を網羅的に洗い出すこと」を目的としています。
一方で実際にシステムへの侵入を試み、どこまで被害が及ぶのかを検証する手法は「ペネトレーションテスト」と呼ばれ、両者は明確に役割が異なります。
それぞれの違いや使い分けについては以下の記事で解説していますので、あわせて参考にしてください。
脆弱性スキャンを実施する5ステップ
脆弱性スキャンは、ツールを導入してただ実行するだけでは不十分です。「どこを診断するべきか」「見つかったリスクにどう対応するのか」を明確にすることで、適切なセキュリティ対策につながります。
ここでは、スキャンを導入する際の一般的な進め方を紹介します。
- 対象を洗い出し、診断範囲やスケジュールを計画する
- 脆弱性スキャンを実行する
- スキャン結果のレポートを作成する
- 修正対応の優先順位を決める
- 対応後に再スキャンし、解消されたか確認する
1.対象を洗い出し、診断範囲やスケジュールを計画する
まず、自社が保有するシステムやアプリケーションを棚卸しし、診断する範囲と実施スケジュールを決めます。
具体的には、以下のような観点で計画を立てます。
| 項目 | 計画内容 |
|---|---|
| 診断範囲 | 以下のシステム・アプリケーションを優先する ・インターネットに接続しているシステム ・機密情報や顧客情報を扱うアプリケーション |
| スケジュール | アクセスの少ない日時にする |
スキャンによって予期せずシステムが停止するリスクもゼロではありません。実施前に責任の所在を明確にし、トラブルに備えて緊急連絡網を整備しておきましょう。
2.脆弱性スキャンを実行する
計画がまとまったら、選定したツールを用いて脆弱性スキャンを実行しましょう。ツールが診断対象のシステムから情報を取得し、既知の脆弱性データベースと照らし合わせ弱点を洗い出します。
3.スキャン結果のレポートを作成する
スキャン完了後は、検出された脆弱性の情報をまとめたレポートを作成します。専門ベンダーに依頼する場合や自動化ツールを利用する場合は、レポートの作成は委託先やツール側で実施することが多いです。
作成されたレポートが「経営陣に報告するためのわかりやすい概要」と「現場担当者が確認する専門的な内容」に分かれていると、社内での状況共有や修正作業がスムーズに進みます。
4.修正対応の優先順位を決める
レポートが出力されたら検出された脆弱性のうち、どれから修正作業を進めるか優先順位(トリアージ)を決定します。
優先順位をつける際は、主に以下の視点を組み合わせて判断します。
- CVSS(共通脆弱性評価システム)(※3)のスコアが示す客観的な危険度
- 自社環境における重要度(インターネットに公開されているか、重要データを扱っているかなど)
※3 CVSS(Common Vulnerability Scoring System):IT製品やシステムにおけるセキュリティ脆弱性の深刻度を、0.0〜10.0のスコアで評価する国際的な標準指標
5.対応後に再スキャンし、解消されたか確認する
修正プログラムの適用やシステム設定の変更が完了したら、同じ範囲に対して再スキャンして以下を確認しましょう。
- 実施した対策が正しく反映されて脆弱性が解消されたか
- 修正作業によって新たな問題が生じていないか
脆弱性は日々新しく発見されます。一度修正して終わりにするのではなく、一連のサイクルを定期的に回し続けることが、安全な環境を維持するポイントです。
ツールを使った診断と手動での診断の違いについては、以下の記事で紹介しているので参考にしてください。
脆弱性スキャンツール・製品を選ぶ際の7つのポイント

脆弱性スキャンツール・製品を選ぶ際は、自社の予算や環境に合っているかを確認することが重要です。ツール選びで確認すべきポイントを見ていきましょう。
- 初期導入・ランニングコストが適切か
- 対象範囲が自社環境に合っているか
- 深い診断ができるか
- 認証スキャン対応があるか
- API連携が充実しているか
- きめ細やかなサポート体制があるか
- 同業他社での導入実績が多いか
1.初期導入・ランニングコストが適切か
脆弱性スキャンツールにかかる費用が、自社の予算に見合っているかを確認しましょう。確認すべき点は以下のとおりです。
| 項目 | 確認すべき点 |
|---|---|
| 課金体系 | スキャン対象のIP数、ユーザー数、ドメイン数などで変動 |
| 提供形態 | 初期費用を抑えやすいSaaS型か、自社構築のオンプレミス型か |
| ランニングコスト | ライセンス更新費用、クラウドサービス利用料金、トレーニング費用など |
また、操作が難しく作業に時間がかかるツールは人件費がかさみます。目に見えるツール代だけでなく、運用にかかるトータルコストで比較検討することが大切です。
2.対象範囲が自社環境に合っているか
ツールの診断対象が、自社の守るべきシステム環境と一致しているかも重要になります。製品ごとに得意とする診断分野が異なるためです。
例えば、クラウドサービスの利用が多い企業であれば、クラウド環境の設定診断に対応していることが必須の選定条件になります。
3.深い診断ができるか
脆弱性を詳しく調べたい場合は、細かな設定やカスタマイズができる専門的なツールを選びましょう。
深い診断を可能にする機能の一例として、複数の手順を踏まないと到達できない画面を自動で診断できる「シナリオ作成機能」などがあります。
また、最新の脆弱性が公開された際に、ツールのデータベースがどれくらい早く更新されるかも、性能を測る指標のひとつです。
4.認証スキャン対応があるか
ツールが「認証スキャン」に対応しているかどうかも確認したい点です。
ツールに管理者権限などのログイン情報を設定し、内部から診断できれば、外からは見えない更新プログラムの適用漏れや設定の不備を特定しやすくなります。
5.API連携が充実しているか
API機能が充実しているかどうかも、選定の基準になります。例えば、APIを活用すると以下のようなことが可能です。
- スキャンの開始や停止を自動で実行させる
- スキャン結果のデータを取得し、自社の管理画面に表示する
API連携を利用することで、診断作業の自動化や他システムとの統合管理が容易になり、運用の拡張性が高まるメリットがあります。
6.きめ細やかなサポート体制があるか
導入後のサポート体制が充実しているかも大切な確認項目です。スキャン結果には専門的な内容が含まれるため、検出されたリスクが誤検知かどうかの判断に迷う場面が多くあります。
そのため次のようなサポートが受けられるツールがおすすめです。
- 操作や設定に関するマニュアルが充実している
- メールやWeb会議で不明点を質問できる
- 導入時の初期設定から運用の安定まで伴走してくれる
とくにセキュリティ専任の担当者が少ない組織ほど、技術的な疑問をすぐに解決できる手厚いサポートがあると安心です。
7.同業他社での導入実績が多いか
自社と同じ業界での導入実績が豊富なツールを選ぶことで、より質の高い診断を受けられる可能性が高まります。同業他社でよく使われているツールは、その業界特有のシステム構成やセキュリティ課題を熟知している傾向があるためです。
製品の公式サイトなどで導入事例や利用者の声を事前に確認しておくと、自社での使い勝手をイメージしやすくなります。
脆弱性スキャンを適切に実施してIT資産や信用を守ろう

システムの脆弱性は日々新しく発見されるため、継続的にリスクを点検する運用体制が欠かせません。安全な状態を維持するために、以下の3点を意識して運用をしくみ化しましょう。
- 定期的な自動スキャンを継続する
- 自社環境に合ったツールや手法を選定する
- 修正後は必ず再スキャンで安全を確認する
今回紹介した「深い診断精度」と「きめ細やかなサポート」を両立しているのが、国内市場シェアNo.1の脆弱性診断ツール「Vex」です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
Vexの詳しい機能や導入事例を知りたい方は以下をご覧ください。
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